- 時刻は一刻一刻移り変って行くものであるが、われわれはいつでも心を現在の一刻に集中しておかなければならない。事柄がまだ出現しないのに、これを迎えることはできないし、また、過ぎ去った事を追いかけても追い付けない。わずかでも、過去を追ったり、来ない将来を迎えるということは、ともに、自己の本心を失っている状態である。
【下し文】
- 心は現在なるを要す。事未だ来らざるに、邀う可からず。事已に往けるに、追う可からず。纔に追い纔に邀うとも、便ち是れ放心なり。
【原文】
- 心要二現在一。事来レ未。不レ可レ邀。事已往。不レ可レ追。纔追纔邀。便是放心。
【語義】
- 現在…自分の本心が自分に離れずに現存すること。
- 来レ未…将来のこと。
- 邀…迎える。
- 不レ可…できない意味。
- 放心…本心を放し失っていること。『孟子』告子上篇に、「学問の道は他なし、その放心を求むるのみ。」とある。
以上、「言志四録(三) 言志晩録」(佐藤一斎、訳注:川上正光、講談社学術文庫より)
0 件のコメント:
コメントを投稿